図書情報室

女性たちの定年後 ―お金・仕事・暮らしのリアル―

女性たちの定年後 ―お金・仕事・暮らしのリアル―

57/ボ

坊美生子/著

祥伝社

男女雇用機会均等法の施行から40年が経ち、高齢期まで働く人は男女ともに増えている。
定年後には退職、雇用延長、再就職など複数の選択肢があり、いずれの場合も「人生の一大イベント」と捉えられやすい。しかし女性の場合、結婚、出産、介護など、さまざまなライフステージを経て働いてきた結果、キャリアの道筋は一人ひとり異なり、「定年後」を具体的に思い描くことが難しい。
現在、60代前半では7割、60代後半では4割の女性が就労しているという。本書は、豊富なデータと当事者への取材をもとに、女性の定年前後の仕事・お金・暮らしについて描き出している。
もうすぐ定年を迎えるミドルシニア女性はもちろん、キャリアを積みたいと考える若年層の女性にとっても、自分らしい働き方と暮らしを考えるための手がかりとなるだろう。

イラストで出会う 女性たちのいる美術史 ―隠されてきた「偉大な」芸術家の物語―

イラストで出会う 女性たちのいる美術史 ―隠されてきた「偉大な」芸術家の物語―

15/リ

李君棠/著

フィルムアート社

「偉大な」芸術家、と聞いた時、あなたは誰を思い浮かべるだろうか。そこに、「女性」は存在するだろうか。思い浮かばなかったとすると、「偉大な」女性芸術家は「存在しなかった」のだろうか。
本書はこの問いに、13世紀から現代にいたる23人の女性芸術家を、彼女たちのいた時代背景とともに考察することで答えている。私たちは本書を通じて、各時代の女性芸術家がどのようにして社会や個人の生活の限界を乗り越え、世界を描く新たな方法を提示し、驚くべき作品を創造してきたかを知ることができるだろう。
豊富なイラストとマンガで綴られた本書は、同時にフェミニズムの視点から、女性たちを美術史から退けてきた社会の構造や制約を解き明かしている。

上野さん、主婦の私の当事者研究につきあってください

上野さん、主婦の私の当事者研究につきあってください

62/ウ

上野千鶴子、森田さち著

晶文社

主婦として家事や育児を担う中で感じるモヤモヤや苦しさを、「当事者研究」という形で見つめ直し、上野千鶴子との対話を通して社会の問題として考えていく一冊である。個人の性格や努力の問題とされがちな悩みが、性別による役割分担や、家事労働が正当に評価されていないことと深く関わっている点がわかりやすく示されている。主婦の声を大切にし、誰もが対等に家庭と社会に参加できるあり方を考えるきっかけを与えてくれる。

AはアセクシュアルのA ―「恋愛」から遠く離れて―

AはアセクシュアルのA ―「恋愛」から遠く離れて―

78/カ

川野芽生/著

リトルモア

「恋愛してこそ一人前」という無言の圧力が満ちる社会で、本書は研ぎ澄まされた知性と透き通った言葉でその規範を解体する。アロマンティック/アセクシュアルである著者が綴るのは、他者に自身の輪郭を預けず、一個の独立した存在として立つことの誇り高い宣言である。
友情を恋愛の下位に置く序列や、「良かれと思って」投げかけられる善意の暴力を鋭く問い直す一方で、本書が提示する「ひとりの自由」はどこまでも美しい。恋愛というルールを通さなくても、私たちはもっと豊かで自由な世界と繋がれる。社会の「当たり前」に息苦しさを感じ、自律を願うすべての人に、ひとりで立つ勇気を授けてくれる一冊だ。

男性のいない美術史  ―女性芸術家たちが描くもうひとつの物語―

男性のいない美術史 ―女性芸術家たちが描くもうひとつの物語―

15/ヘ

ケイティ・ヘッセル/著、鮫島圭代/訳

パイインターナショナル

ルネサンスから現代までの400年以上にわたる女性芸術家たちの作品の数々を、フルカラーで紹介する。掲載された300点もの作品を見て、初めて知る名前のなんと多いことか!
「歴史」の分野で登場人物が男性中心であることは当然で、そのことを疑問に感じたりするよりは、あきらめの方が大きかったように思う。そこで、本書のように、今まで注目されてこなかった女性たちの働きに注目されることが嬉しいのだ。これは美術史に限ったことではない。
厚みも重みも相当な本書は―貸し出しも可能ではあるが―、ぜひ、ご来館のうえ、ゆっくり閲覧されることをお勧めしたい。

到来する女たち ―石牟礼道子・中村きい子・森崎和江の思想文学―

到来する女たち ―石牟礼道子・中村きい子・森崎和江の思想文学―

108/ワ

渡邊英理/著

書肆侃侃房

九州に縁のある三人の女たち-石牟礼道子・中村きい子・森崎和江-は雑誌『サークル村』に集い、資本主義と家父長制の二重の抑圧の中で自らの言葉を書き綴ることを始めた。それは女の思想のはじまり、わたしたちのフェミニズムのはじまりだった。本書は三人の表現を思想文学として読み解き、それぞれの個別活動の交差する地平を検討し、聞書きという受動と能動のいずれもがたたみ込まれた行為の可能性を追求している。
孤立させられ沈黙を強いられてきた女たちの声は不揃いのまま結びあい「わたし」が「わたしたち」になる。余韻ある結びの一文まで引き込まれ、読み手の心に大きな力が到来する一冊である。